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金融機関の貸金庫に入れてはいけないもの。

先日、後見人の仕事で、銀行の貸金庫の開扉をおこなってきました。
ここに辿り着くまで約半年を要してしまいました。

私が成年後見人に就任した女性(Aさん)は現在施設に入所中です。夫(Bさん)と2人暮らしでしたが、Bさんは1年前に亡くなられました。なお、子供はいません。
Bさんのご兄弟は音信もないまま既に全員亡くなられており、甥姪とも面識はありません。

Aさんの成年後見人としては、亡くなられたBさんの相続手続をおこなわなければなりません。ご自宅を捜索しましたがBさんの遺言書はみつかりませんでした。公証役場で公正証書遺言を作成していないか調査しましたが平成元年以降に作成された公正証書遺言はないとのことでした(平成元年1月以降の公正証書遺言は日本公証人連合会のコンピューターに登録されるため検索可能です)。

一方で、Bさんは銀行で貸金庫を借りておられました。Bさんの死亡を確認すると金融機関は口座を凍結します。貸金庫も同様です。相続人全員もしくは遺言で指定された遺言執行者でなければ、金融機関は解約等の手続には対応してもらえませんし、貸金庫も開けることができません。

貸金庫の中に自筆証書遺言が入っている可能性はあるものの、こうなっては推定相続人全員で手続をおこない、貸金庫を開扉するしかありません。相続関係の調査をおこなうと、養子縁組が入り乱れる複雑な相続関係で、北海道から長崎まで11名ものBさんの甥姪がみつかりました。連絡をとり、事情を説明するもほとんどのかたがBさんのことをご存じなく、突然の知らせに驚いておられました。

甥姪の方々がAさんとともに推定相続人となるため遺産分割協議が必要となること、しかし貸金庫があるため、貸金庫を開扉した結果、遺言書がみつかれば相続を受けられない可能性があることを説明し、貸金庫開扉への協力を求めました。
準備が整うと、銀行担当者と打合せて貸金庫開扉の日取りを決めます。また、公証人に連絡し、「事実実験公正証書」の作成を依頼しました。「事実実験公正証書」とは、後日のトラブルとならないよう(1人で開扉して、後で「貸金庫の中にダイヤの指輪があったはずだ」とか言われないよう)、貸金庫の開扉に立ち会ってもらい、貸金庫の内容物が何であったかという公正証書を作成してもらうものです。

当日、公証人の立会の下、銀行で貸金庫を開扉しました。すると…出てきました。Bさんの公正証書遺言が。遺言書には「Bさんの全財産を妻のAさんにすべて相続させる」と記載されていました。
昭和の頃に作成されていたため、コンピューターに登録されておらず、公証役場ごとの検索しかできなかったため、調査で明らかにならなかったのが盲点でした。

甥姪のみなさんに遺言書がみつかったことを報告すると、「よかったですね」と喜んでくださるかた、遺産がもらえず残念がるかた、反応は様々でした。
Bさんも遺言書を作成したまではよかったですが、貸金庫に保管してしまったことが失敗でした。遺言書が手元にあれば、戸籍を集めたり、推定相続人全員の協力を求める必要もなく、これほどの作業になることもなかったのですが…

「遺言書」→「大切な物」→「貸金庫に入れるべきもの」との考えは、一般のかたにとっては自然なものと思います。
ですがみなさん、遺言書を金融機関の貸金庫に保管するのはやめましょう。(澤井 靖人)



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