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(公社)成年後見センター・リーガルサポート兵庫支部第19回通常総会②

つづいて2本目のスピーチ原稿です。

(2)来賓前挨拶
『まずは、ご来賓の方々を始め、皆様にはお忙しい中、ご臨席を賜り、誠にありがとうございます。さて、最近はテレビや新聞等の至る所で「AI化」という言葉を目にします。遠くない将来、人間の仕事の多くが人工知能に代替される社会になっていくというのです。先日読んだある書籍によると、2013年にオックスフォード大学の研究チームが予測したコンピュータ化によって「10年から20年後になくなる仕事」の第2位は「不動産登記の審査・調査」でした。登記申請業務に携わる私たちの仕事も今後少なからず影響を受けていくのかもしれません。一方で「残っていく仕事」に挙げられた職種に共通する点としては、コミュニケーション能力や理解力を求められる仕事、介護等の柔軟な判断力が求められる肉体労働が多いようです。「成年後見人」は、こちらの仕事に属していると思われますので、「成年後見業務」自体は将来にわたってなくなるということはないように感じます。

ただ、成年後見人が将来にわたって存在し続けるとしても、私は2つの不安を抱いています。1つは「将来、成年後見が社会から幅広く受け入れられる制度であるか」ということであり、もう1つは「将来にわたって司法書士という専門職が成年後見の現場から必要とされ続ける職種であるか」ということです。

まず、「将来、成年後見が社会から幅広く受け入れられる制度であるか」についてどうでしょうか。超高齢化社会に突入する中で、現在の社会は成年後見制度の拡がりを予感し、その必要性を認めつつも一方で制度の使い勝手の悪さのようなものも持ち合わせています。見込まれる成年後見の需要に対して、現実には後見等事件の選任数がそれほど伸びないこと、専門職後見人が親族後見人よりも多く選任されていることといった現実がそれを示しているように思います。

これに対する答えとして私たちが取り組むべきことは「成年後見制度利用促進法への対応」です。国の基本計画の施策の目標として、「本人のメリットを実感できる制度・運用へ改善を進める」とあります。国もこの課題をクリアしない限り後見制度が拡がることはないと感じており、期間を区切ってではありますが本腰を入れて取り組もうとしています。私たちリーガルサポートはここに積極的にコミットし、よりよい体制整備に繋げていく努力をしなければなりません。そこで私たちの知見を示すことができれば、後見制度に私たち司法書士という専門職が必要不可欠な存在であることを社会により認識してもらうことにも繋がっていくと思います。

次に「将来にわたって司法書士という専門職が成年後見の現場から必要とされ続ける職種であるか」ということについてはどうでしょうか。現在、専門職団体の中で私たち司法書士は最も多く後見人等に選任されています。このことは私たち司法書士への評価の結果であり、十分に誇ってよいことと思いますが、一方で多くの司法書士が成年後見業務に取り組むようになる中で、親族や福祉関係者から寄せられる残念な声も増えてきました。特に増えているのは「司法書士後見人が本人に会いに来ない、司法書士後見人の顔が見えない」という声です。もし、後見人が現場に赴くことなく机の上でのみ解決しようというのであれば、冒頭に申し上げた「10年から20年後にも残っている仕事」に共通する要素からみると逆行するものであり、事実であれば非常に残念なことです。このままでは将来は司法書士が成年後見の現場から必要とされない職種になってしまうかもしれません。

これに対する答えは、私たち司法書士がなぜ最も多くの後見人に選任されるに至ったかという原点を再確認することで、私は2つあると考えています。1つ目はリーガルサポートという不正防止・会員養成・会員支援のしくみを整備した組織を立ち上げたことにより、成年後見業務の専門家であると社会に認識されたことです。そして2つ目は、司法書士という職業性が後見業務にマッチしたのだと思います。司法書士という職業は試験に合格すればなれるものであり、個々人の性格や振る舞いが影響するものではありません。ですから司法書士それぞれのキャラクターは千差万別です。中にはコミュニケーションを不得手とされるかたも当然にいるでしょう。しかし、弁護士・税理士・行政書士等業界ごとの職業性というのは存在し、司法書士も登記業務等の業務分野に育てられる職業性というものはやはりあると思います。私が後見業務を始めた頃に福祉関係者等からよく聞いた声は「司法書士後見人はよい。本人にも面談に来てくれるしフットワークが軽い。敷居も低く相談や話もしやすい。大変な問題も法律知識を駆使して解決してくれるので頼りになる」といったものでした。これらの声は個々の司法書士に対する評価だけではなくやはり司法書士という専門職団体の職業性への評価だったように感じています。

この評価に揺らぎが出始めていることへの危機感を持って、私たちは今一度、この原点に立ち返る必要があります。昔は当たり前だったこと、例えば原則として月に1回は本人に会いに行くといったことに尽力しましょう。今の評価はこれまでの評価の積み重ねに過ぎません。ここにあぐらをかくことなく、大切な原点を守りつつもさらに高い評価を得ることを目指しましょう。そうすれば間違いなく将来にわたって司法書士が成年後見の現場から必要とされ続けるはずです。

今は成年後見制度において大きな変化の時と位置付けられています。10年後にはより社会に受け入れられた成年後見制度になり、また私たち司法書士が今まで以上に必要不可欠な存在となっているよう支部執行部一丸となって汗をかいていく所存です。しかし、評価は支部組織の活動のみで得られるものではありません。併せて、会員の皆様一人ひとりにおかれましてもこれまで以上に汗をかいて後見業務に取り組んでいただくようお願いいたします。

引き続き、皆様方のご支援・ご協力を賜りますようお願い申し上げまして、ご挨拶とさせていただきます。』
(澤井靖人)


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(公社)成年後見センター・リーガルサポート兵庫支部第19回通常総会①

5月24日(木)に(公社)成年後見センター・リーガルサポート兵庫支部の第19回通常総会が開催されました。家庭裁判所や県内の自治体関係者、関係団体等多くのかたがたに来賓としてお越しいただき、盛大に開催することができました。

支部長職の任期も残り1年、悔いの残らぬよう精いっぱい取り組んでいきたいと思います。総会と来賓の前で2回挨拶をさせていただき、会員のみなさまに支部長としての考え・想いを伝えさせていただきました。総会に参加できなかった会員のみなさまにも想いをお伝えしたいと思いますので、ここでスピーチ原稿をあげさせていただきます。

まずは1本目。

(1)総会挨拶
『昨年の総会挨拶で私は、大規模支部としての支部組織の安定と、変わりゆく後見制度への対応に重点的に取り組んでいくと申し上げました。そして、具体的には成年後見制度利用促進法に対応することと、執務管理精査センター構想を進めていくことであると申し上げました。

昨年度は当支部の会員数・継続事件数ともに前年度より右肩上がりに増加を示しているものの、平成27年度をピークに伸び率は落ち着きつつあります。そのような状況下において昨年度は役員選任規程等の規程の細部の見直しをおこなったり、地区連絡会の活性化を図るなど、支部組織の安定化に努めたことは結果として時宜に適ったものであったと考えております。

特に本年4月から始動した執務管理精査センターは、従来の司法書士会館にある事務局とは別に神戸市中央区海岸通で事務所を賃借し、新たに職員2名を雇用することで業務報告の精査に特化する体制を整備するためのものです。会員である執務管理委員がおこなっていた業務報告の精査作業を、判断を要する部分と複雑な判断を要しない事務作業に役割を分掌していくことによって、効率化と専門化を図ろうとするもので、昨年度は執務管理部・総務部・財務部等の複数の事業部が連携しながら検討や準備に多くの時間を割いてまいりました。運用開始後まだ間もない段階ですが、従来の執務管理委員の人数や負担も大幅に減らすことができ、現時点では関係者から高い評価をいただいておりますので、本事業を進めてきたことは間違いなかったのだろうと感じています。

当支部の独自構想である執務管理精査センターは、同様の問題を抱える本部や他支部も注目しているところです。今後センターがどのように発展展開していくかについては、私自身には複数のヴィジョンがありますが、そのいずれかの実現に至るには少し時間が掛かることが予想され、私が支部長として取り組める期間としては少し時間が足りないように思います。まずは始まったばかりのセンターを軌道に乗せていくことが平成30年度の大きな課題であり私の役目になろうと考えています。

成年後見制度利用促進法への取り組みについては、企画広報部を中心として自治体への積極的なアプローチを続けておりますが残念ながらまだ大きな変化が生じるには至っておりません。ただ、埼玉県志木市や大阪市などの一部の自治体で大きな動きが生じていること、兵庫県内においても、例えば神戸市において今年度から成年後見制度利用支援事業の要件緩和や市長申立ての推進施策が始まる等、変化への芽吹きは確実に感じているところですので、今年度はより大きな変化に繋げることができるよう、さらに積極的に取り組んでいくまいります。

私は副支部長として8年間、常にリーガルサポート兵庫支部の事業運営の最前線に立って取り組んでまいりました。その後に支部長に就任して今年が2年目、リーガルサポート兵庫支部での活動の区切りになる重要な年です。私にとって「10年の旅」の総決算として、成果を上げるべくこれまで以上の熱意で取り組んでまいる所存です。皆様におかれましても、引き続き支部執行部にお力をお貸しいただければと思います。ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。』(澤井靖人)


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